令和8年9月の高山市議会 定例会において、
一人ひとりの状態や希望に応じた就労・社会参加支援について一般質問を行いました。
1.質問の背景
働くことは、単に収入を得ることだけではありません。生活のリズムをつくること、人と関わること、自分の役割を持つこと、そして社会の一員であることを実感することにもつながります。
一方で、人の状態は変化します。障がいのある方が年齢を重ね、これまでと同じ作業や通所が難しくなることもあれば、働きたいという希望があっても、生活面や作業面の課題からすぐには既存の就労支援につながらない場合もあります。また、認知症になったからといって、「働きたい」「誰かの役に立ちたい」「地域や社会とつながっていたい」という本人の思いまでなくなるわけではありません。
重要なのは、その人が既存の制度に合わせられるかだけを見るのではなく、本人の状態や希望の変化に応じて、支援する側も柔軟に対応できる仕組みをつくることです。
そこで今回は、就労継続支援B型利用者の状態変化、新たに始まった就労選択支援、認知症の方の就労・社会参加、そして複数の分野をまたいだ支援体制という4つの視点から質問しました。
2.質問と市の答弁(Q&A)
Q1:就労継続支援B型利用者の年齢構成は。また、加齢や心身の状態変化によって利用日数の減少、他のサービスへの移行、利用終了に至るケースをどのように把握しているのか。本人の希望に応じて働く機会や社会とのつながりを維持する上での課題は。
A1:令和8年9月1日現在、就労継続支援B型の支給決定者は319人。年齢構成は、20歳未満4.1%、20代20.4%、30代13.5%、40代16.3%、50代23.2%、60代16.3%、70歳以上6.3%となっており、50代が最も多い。40代から60代までの中高年層が全体の過半数を占めている。利用者の中には、体調やメンタルの波、疲れやすさ、長時間の作業が難しいこと、対人関係への不安などにより、利用日数の減少、他サービスへの移行、利用終了に至るケースがある。市では、相談支援専門員からの報告やモニタリング記録などによって状況を把握し、本人の意向や状態の変化を踏まえた支援を行っている。障がいの程度や特性は一人ひとり異なるため、地域や事業者が障がいを理解し、個別の配慮を共有できる環境づくりが課題である。
Q2:令和7年10月から開始された就労選択支援について、本市の利用状況と提供体制は。また、アセスメント後も直ちに就労系障がい福祉サービスの利用に至らない人をどのように支援しているのか。
A2:令和8年9月1日現在、就労選択支援の利用者は8人で、令和8年4月から市内1事業所がサービスを提供している。事業所では、本人の意向をもとに、強みや適性、就労に向けた課題、働く上で必要な配慮などについて、2週間程度の模擬作業や体験を通じて把握している。アセスメントの結果、課題があり直ちに就労系障がい福祉サービスにつながらない場合には、相談支援専門員が空白期間を生じさせないよう、本人の生活面や就労準備に配慮した支援を組み立てている。生活リズムやメンタルを維持するための通所サービスや、集いの場などの地域資源も組み合わせながら、本人の状態に応じて次のステップにつながるよう支援している。
Q3:認知症になっても働きたい、地域や社会で役割を持ち続けたいという本人の希望を、市はどのように把握しているのか。また、就労や就労的活動を含む社会参加の機会の確保にどのように取り組むのか。
A3:認知症の方からの相談については、地域包括支援センターや認知症相談会、認知症カフェ、認知症疾患医療センターなどで対応している。実際に認知症の方から就労や仕事の継続に関する相談が寄せられることがあり、就労につながったケースや、就労継続支援を利用した例もある。一方、市として認知症の方に対する就労支援の体制整備には至っていない。認知症になっても一人ひとりにできること、やりたいことがあり、住み慣れた地域で仲間とつながりながら希望を持って自分らしく暮らし続けることができるという「新しい認知症観」の実現に向け、関係機関や企業などの意見も聞きながら、就労を含めた社会参加につながる取組を検討していく。
Q4:障がい、加齢、認知症などにより複数分野にまたがる支援が必要な人の就労・社会参加について、関係部署や関係機関はどのように連携しているのか。また、専門職や大学等の研究機関、福祉事業者、NPO、地域事業者等と連携し、支援方法とその効果を検証するモデル的な取組を実施する考えは。
A4:令和8年度から実施している重層的支援体制整備事業において、複数分野にわたる支援を必要とする方に対し、居場所や就労体験などを通じて本人や世帯が社会とつながるための参加支援事業を行っている。生活課題、就労に向けた課題、医療・介護の状況などは多様であるため、支援機関が集まる支援会議等で情報を共有し、関係部署間の役割分担を行いながら、福祉、就労、生活支援等が切れ目なくつながるよう調整している。また、支援の質を高めるためには専門職の知見を活用し、本人の状態や希望に応じた支援方法を検討することが重要である。大学等の研究機関との連携によって、データに基づき支援の効果を検証していくことも有効と考えており、今後も関係機関の協力を得ながら、支援体制づくりと支援方法の検証・改善に取り組んでいく。
3.今回の質問を終えて
今回の一般質問では、障がいや加齢、認知症などによって心身の状態が変化しても、本人の「働きたい」「社会とつながっていたい」「役割を持ちたい」という希望をどのように支えるのかという視点から質問しました。
まず、就労継続支援B型については、市内の支給決定者319人のうち、40代から60代までが全体の過半数を占めていることが分かりました。特に50代は23.2%と最も多く、今後さらに利用者の高齢化や心身の状態変化への対応が重要になっていくと考えています。
また、市からは、体調やメンタルの波、疲れやすさなどによって、実際に利用日数の減少や他サービスへの移行、利用終了に至るケースがあることも示されました。本人の状態に応じてサービスを変更することは必要ですが、「まだ働きたい」「通い続けたい」という希望があるにもかかわらず、選択肢がなくなってしまうことがないよう、今後も実態を把握していく必要があります。
就労選択支援については、開始間もない制度ではありますが、市内1事業所で8人が利用していることが分かりました。アセスメント後、直ちに就労系サービスにつながらない場合にも、相談支援専門員が空白期間をつくらず、通所サービスや地域の居場所などを組み合わせて支援しているとの答弁がありました。今後、利用者が増えていく中で、こうした支援をどこまで一人ひとりに寄り添って行えるのか、引き続き注視したいと思います。
認知症については、就労や仕事の継続に関する相談が実際にあり、就労につながったケースや就労継続支援を利用した例もある一方、高山市として就労支援の体制整備には至っていないことが明らかになりました。
認知症になった方を「支援を受ける人」としてだけ捉えるのではなく、その人が持っている経験や能力、「まだ働きたい」「誰かの役に立ちたい」という希望を起点に、社会参加の選択肢を増やしていくことが必要だと考えています。今後、市が関係機関や企業の意見を聞きながら、どのような取組につなげていくのか注目していきます。
そして最後に、障がい福祉、高齢者福祉、認知症、就労など、一つの分野だけでは対応しきれない課題について質問しました。
高山市では今年度から重層的支援体制整備事業が始まっています。市からは、専門職の知見を活用することに加え、大学等の研究機関と連携し、データに基づいて支援の効果を検証することも有効との認識が示されました。
僕は、ここが今後非常に重要になると考えています。
既存のサービスに本人を当てはめるだけではなく、既存の制度では十分に応えられないニーズがあれば、作業療法士などの専門職、福祉事業者、NPO、地域の事業者、大学等の研究機関など、それぞれの知見や力を持ち寄り、新しい支援方法を実際に試してみる。そして、その成果や課題をデータとして検証し、次の支援につなげていく。
最初から大きな制度をつくる必要はありません。数人の事例からでも、一人ひとりの状態や希望に合った支援方法を実践し、検証を積み重ねることで、高山市に合った支援の仕組みをつくることができると考えています。
一人でも多くの市民が、年齢や心身の状態が変化しても、その人らしい形で働くことや社会参加を続けられる高山市となるよう、今後も取組を注視し、提案を続けていきたいと思います。
より詳細な質問・答弁内容については、高山市議会の議事録もしくは高山市議会YouTubeによる中継をご覧ください。